マーケから営業へ、リードはいつ・どう渡すべき?引き渡しルールの作り方

マーケティングで獲得したリードを営業に渡しているのに、なかなか対応してもらえない。営業に聞くと「ニーズがあるのかわからないから、後回しにしている」と言われる。こうしたすれ違いは、リードの基準を決めただけでは解消しません。

「どのリードを渡すか」が決まったら、次に必要なのは「いつ・誰に・何を添えて渡し、いつまでに対応してもらうか」という、受け渡しのルールです。この記事では、営業としてリードを受け取る側と、マーケティングとして渡す側の両方を経験してきた立場から、引き渡しルールの作り方を5つのステップで紹介します。

なお、渡すリードの基準(MQL・SQL)の決め方は、『「良いリード」の基準をマーケと営業でそろえる方法|MQL・SQLの決め方と運用のコツ』で詳しく解説しています。

また、この記事でいう「マーケティング」と「営業」は、部門の有無にかかわらず、リードを集めて育てる役割と、リードに連絡して商談を進める役割を指します。インサイドセールスがいる場合は、マーケティングからインサイドセールスへ、インサイドセールスから営業への引き渡しにも、同じ考え方が使えます。


目次


結論:引き渡しルールで決めるのは5つのこと

リードの引き渡しルールでは、次の5つをマーケティングと営業で一緒に決めます。

  1. 渡すタイミング:マーケティングが、獲得してからいつまでに渡すか
  2. 渡す相手と経路:マーケティングが、誰にどうやって知らせるか
  3. 一緒に渡す情報:営業が最初の連絡ですぐに使える情報は何か
  4. 対応の期限:営業が、受け取ってからいつまでにリードに連絡するか
  5. 結果の返し方:営業が、対応した結果をどうマーケティングに返すか
マーケから営業へリードを渡すときに決める5つのこと(渡すタイミング、渡す相手と経路、一緒に渡す情報、対応の期限、結果の返し方)を示した図

ポイントは、引き渡しを「渡したら終わり」にせず、渡した後の対応までを、個人ではなくチームで管理することです。

リードの引き渡しで起きる、マーケと営業のすれ違い

マーケティング担当は「せっかく渡したのに、対応してくれない」と感じ、営業は「このリードには、今は連絡しなくていい」と判断している。中には、「マーケティングから渡されるリードは、どうせ商談にならない」とまで思っている営業もいます。引き渡しのすれ違いは、多くの場合、この認識の差から生まれます。

営業が「すぐに動くリード」と「後回しにするリード」

私自身、営業をしていたころは、マーケティングから渡されたリードを2つに分けて扱っていました。

すぐに動いていたのは、自社サイトからの問い合わせのように、「今まさに届いたリード」や「相手が何かを求めている」とはっきりわかるリードです。

一方で、後回しにしていたのは、次のようなリードでした。

  • 製品比較サイトで複数社の資料をまとめて請求したリードを、獲得からかなり時間が経ってから、まとめて渡された場合
  • 開催からしばらく経ったセミナーの参加者リストを、あとから渡された場合

どちらも、相手が何を求めているのか以前に、そもそもニーズがあるのかどうかがわかりません。さらに、獲得してから時間が経っているため、相手も資料を請求したことや、セミナーに参加したことを忘れているだろうと感じていました。営業は、ニーズがあり、すぐに売上につながる可能性があるリードから対応したいものです。ニーズがあるかどうかもわからず、連絡しても話が進む見込みが低いと思えば、目の前の商談を優先するのは、営業として自然な判断です。

すれ違いの原因は「渡し方」にある

つまり、営業が後回しにする理由は、リードの質だけではありません。渡すのが遅い、ニーズがあるかどうかわからない、対応したかどうかを誰も見ていないという、渡し方の問題が大きいのです。

逆に言えば、渡し方のルールを整えるだけで、同じリードでも営業の受け止め方は変わり、「マーケティングのリードは商談にならない」という思い込みも変えていけます。次の章から、その具体的な作り方を紹介します。

引き渡しルールの作り方(5つのステップ)

STEP 1:渡すタイミングを決める

リードは、獲得してから時間が経つほど、相手の関心が薄れていきます。そのため、すべてのリードをまとめて渡すのではなく、相手の関心の高さに応じて、渡すタイミングを分けて決めます。以下は一例です。商材や体制によって適したタイミングは変わるので、自社に合わせて調整してください。

  • 問い合わせ、見積もり依頼、自社サイトでの資料ダウンロードなど:届いたらすぐに渡す
  • 製品比較サイトなどでの一括資料請求:その日のうちに渡す
  • 自社主催セミナーの参加者:遅くとも開催の翌日までに渡す
  • 展示会の来場者:ブースでの会話をもとに分け、具体的な相談があった人は翌日までに渡す。名刺交換だけの人は、お礼メールへの反応などで関心を確かめてから渡す
リードの関心の高さに応じて、すぐに渡す、その日のうちに渡す、翌日までに渡す、関心を確かめてから渡す、の4つに渡すタイミングを分けた例

自社サイトから資料をダウンロードした人は、自社の製品やサービスに関心を持って行動しています。問い合わせと同じように、届いたらすぐに渡します。一方で、製品比較サイトなどで他社の資料とまとめて請求した人は、「この会社の資料を請求した」と覚えていないことが多く、求めていることが違ったり、そもそも今は必要としていなかったりする場合もあります。こうしたリードは、その日のうちに渡せば十分です。

セミナーと展示会も、分けて考えます。自社主催のセミナーに申し込む人は、少なくとも自社の課題に気づき、解決する方法を探している段階です。一方、展示会の来場者は広く情報を集めることが目的で、名刺を交換しただけの人も多く含まれます。ただし、ブースで具体的な相談があった人は関心が高く、展示会の後はほかの出展企業からの連絡も集中するため、早めに渡すことが大切です。

以前関わった現場では、セミナーの参加者リストは、当日の出欠を反映したうえで、遅くとも開催の翌日には営業に共有するルールにしていました。あわせて、お礼メールを開封したかどうかや、参加者アンケートの回答も共有しました。

その結果、営業がマーケティングで獲得したリードに興味を持つようになり、営業の側から「次はこんなテーマでセミナーをやりたい」という企画案が出てくるほど、セミナーへの意欲も高まりました。渡すのが早く、情報がそろっていれば、営業にとってリードは「後回しにするリスト」から「すぐに使える材料」に変わります。

STEP 2:渡す相手と経路を決める

次に、誰がリードを受け取り、どうやって知らせるのかを決めます。担当が決まっていないリードは、誰も対応しないまま残りがちです。業種や地域、製品などで担当を割り振るルールを決めておきます。

知らせ方も、リードの優先度に応じて分けます。問い合わせや見積もり依頼など優先度の高いリードは、1件ずつ通知が届く形にして、すぐに気づけるようにします。一方、セミナーの参加者など数が多いリードは、一覧でまとめて共有しても問題ありません。ただし、一覧で渡す場合は、リードごとに担当者と対応状況がわかるようにしておきます。どこまで対応したのかが見えない一覧は、対応が漏れやすくなるためです(詳しくは『リードはあるのに商談にならない原因とは?見直すべき5つのポイント』で紹介しています)。

例えば、自社サイトの問い合わせフォームや資料ダウンロードのフォームは、送信された時点でマーケティング担当だけに通知が届く設定になっていることがよくあります。通知先に営業も加えておくだけで、関心の高いリードにすぐ気づけるようになります。

ただし、通知先を増やすだけでは十分ではありません。通知を受け取る人が多いと、「これは誰かが対応してくれるだろう」とお互いに思い、結果として誰も対応していない、ということが起こります。通知が届いたら誰が担当するのかをすぐに決めるルールと、担当が決まっていないリードが残っていないかを、毎日など決まったタイミングで確認するルールも、あわせて決めておきます。CRMなどで担当者を自動で割り振る設定にしておけば、この確認の手間も減らせます。

STEP 3:一緒に渡す情報を決める

営業が「後回しにする」理由の多くは、そもそもニーズがあるのかどうか、相手の状況がわからないことです。そこで、ニーズの有無や検討の段階を判断でき、営業が最初の連絡ですぐに使える情報を、リードと一緒に渡します。

情報を整理するときの目安になるのが、BANTCH(バントシーエイチ)という考え方です。予算(Budget)、決裁権(Authority)、必要性(Needs)、導入時期(Timeframe)、競合(Competitor)、導入後の体制(Human resources)の頭文字をとったもので、商談を進められる状態かどうかを判断するときに使われます。

以下は、引き継ぎで渡したい情報の例です。表中のMAツール(マーケティングオートメーション)は、メールの配信や、Webページの閲覧などの行動の記録を自動で行うツールです。

項目内容の例主な集め方
獲得したきっかけ問い合わせ、資料ダウンロード、セミナー参加などフォーム、参加者リスト
関心のあるテーマダウンロードした資料、参加したセミナーのテーマMAツール、参加者リスト
最近の行動料金ページの閲覧、お礼メールの開封などMAツール
必要性・課題解決したいこと、今困っていることフォーム、アンケート、最初の連絡
検討の段階情報収集中か、比較検討中かフォーム、アンケート、最初の連絡
導入時期今年度か、来年度以降かフォーム、アンケート、最初の連絡
予算・決裁者予算の有無、誰が決めるのか最初の連絡

ただし、1つのフォームに入力項目を詰め込みすぎると、送信する前に離脱してしまう人が増えます。セミナーであれば、申込フォームと参加者アンケートに分けて聞くなど、1回あたりの入力の負担を抑える工夫が必要です。私が取り組んだときは、問い合わせや資料請求のフォームの項目を見直し、BANTCHに関わる情報をできるだけフォームで取れるようにしました。セミナーの参加者アンケートにも、課題や検討の段階、導入時期などを聞く項目を加えています。そのうえで、フォームやアンケートに入れきれなかった項目は、インサイドセールスが最初に連絡するときに必ず聞く項目として決め、聞いた内容をCRM(顧客管理システム)に入力するように徹底しました。

これにより、同じ資料ダウンロードやセミナー参加でも、個人的な情報収集なのか、製品の比較検討をしている段階なのか、今年度の導入を考えているのか、来年度以降なのかがわかるようになりました。優先順位をつけて、最も関心の高いリードにすぐ対応できるようになったことで、アポイントの獲得や商談化の割合も高まりました。

STEP 4:対応の期限を決める

リードを渡した後の対応を、営業一人ひとりに任せていないでしょうか。これまで関わってきた現場でも、リードを渡しても、すぐに対応するメンバーもいれば、1週間経っても手をつけていないメンバーもいました。原因は、渡した後の対応を、個人に任せていたことでした。

そこで、受け取ってから連絡するまでの期限を、チームの約束として決めます。こうした部門間の約束は、SLA(サービスレベルアグリーメント)と呼ばれることもあります。期限は、STEP 1のタイミングと同じように、リードの関心の高さに応じて分けて決めます。例えば、問い合わせや見積もり依頼は当日中、セミナーの参加者は3営業日以内といった形です。こちらも一例なので、自社の体制に合わせて調整してください。

実際に取り入れたのは、次のような仕組みです。

  1. リードを渡したら、最初の対応をタスクとしてCRMに自動で登録する
  2. タスクに期日を設定する
  3. 期日を過ぎても完了していないタスクがあれば、担当の営業にリマインドを送る。それでも対応できない場合は、別の担当に割り振る
リードを渡したら最初の対応をタスクとして登録し、期日までに対応がなければ担当者にリマインドし、それでも未対応なら別の担当に割り振る流れを示した図

これらは、CRMの機能や、スプレッドシートとGoogle Apps Scriptを組み合わせて、できるだけ自動で動くようにしました。

目の前の仕事に追われて、単に対応が漏れていたメンバーからは、リマインドに対して感謝のコメントが届き、すぐに対応してもらえるようになりました。引き渡し後の対応を個人ではなくチームで管理するようにしたことで、対応漏れが減り、アポイントの獲得数や商談の数も増えていきました。

STEP 5:結果をマーケティングに返す流れを決める

最後に、渡したリードがどうなったのかを、マーケティングに返す流れを決めます。商談になったのか、見送ったのか、見送った場合はその理由は何か。これらがCRMに残っていれば、マーケティングは「どんなリードが商談につながるのか」を確かめ、渡すタイミングや添える情報を見直せます。さらに、どのセミナーや資料から商談が生まれているのかがわかれば、マーケティング施策そのものを見直す材料にもなります。

結果を返すときは、営業に自由な文章で書いてもらうよりも、ステータスや見送り理由を選ぶ形にしておくと、入力の手間が減り、集計もしやすくなります。商談にならなかったリードを、状態に応じてインサイドセールスやマーケティングに戻す方法は『リードはあるのに商談にならない原因とは?見直すべき5つのポイント』のポイント4で、戻すかどうかを判断するための確認項目は『「良いリード」の基準をマーケと営業でそろえる方法|MQL・SQLの決め方と運用のコツ』のSTEP 4で紹介しています。

担当者が少ない会社の場合

マーケティングと営業を同じ人が兼ねている会社や、担当者が数名しかいない会社では、「渡す相手がいないので、引き渡しルールは必要ない」と思われるかもしれません。

しかし、人数が少ない会社ほど、ルールの効果は大きくなります。目の前の商談や別の業務に追われると、関心の高いリードへの連絡が、気づかないうちに後回しになるためです。この場合の引き渡しは、「数日後の自分」や「手が空いた誰か」への引き継ぎだと考えてください。

すべてを最初からそろえる必要はありません。まずは、次の3つから始めるのがおすすめです。

  • フォームが送信されたら通知が届くようにし、誰が対応するかをすぐに決める(STEP 2)
  • 最初の連絡で必ず聞く項目を決め、CRMやスプレッドシートに残す(STEP 3)
  • 最初の連絡をタスクとして登録し、期日を決める(STEP 4)

人数が少ないうちにこの形をつくっておけば、メンバーが増えたときも、同じルールのまま引き継ぎができます。

よくあるご質問

リードは、すぐに渡すべきですか?まとめて渡すべきですか?

関心の高さによって分けるのがおすすめです。問い合わせや自社サイトでの資料ダウンロードのように、相手が自社に関心を持って行動したリードはすぐに渡します。一括資料請求や、展示会で名刺を交換しただけのリードなどは、関心の高さを確かめながら渡します(詳しくはSTEP 1)。時間を置いてまとめて渡すと、相手の関心が薄れ、営業も後回しにしやすくなります。

対応の期限は、何日くらいが目安ですか?

リードの関心の高さによって変わります。例えば、問い合わせや見積もり依頼は当日中、セミナーの参加者は3営業日以内といった形です。ただし、守れない期限を決めても、すぐに形だけのルールになってしまいます。まずは今の体制で守れる期限から始め、守れているか、商談につながっているかを見ながら、少しずつ短くしていくのがおすすめです。

「トスアップ」と「引き渡し」は違うものですか?

ほぼ同じ意味で使われます。トスアップは、マーケティングやインサイドセールスが、商談につながりそうなリードを営業に渡すことを指す言葉です。この記事で紹介したルールは、トスアップのルールとしてもそのまま使えます。

渡しても営業が対応してくれないときは、どうすればよいですか?

まずは、営業が後回しにしている理由を聞いてみてください。多くの場合、「ニーズがあるかどうかわからない」「どこまで対応したかを誰も見ていない」といった、渡し方の問題が見つかります。添える情報を増やす(STEP 3)、対応の期限とリマインドの仕組みをつくる(STEP 4)ことで、改善できることが多いです。

まとめ

リードの引き渡しは、「どのリードを渡すか」を決めただけでは、うまく回りません。渡すタイミング、渡す相手と経路、一緒に渡す情報、対応の期限、結果の返し方の5つを、マーケティングと営業で一緒に決めることで、同じリードでも営業の動きは大きく変わります。

大切なのは、引き渡しを「渡したら終わり」にせず、渡した後の対応までを、個人ではなくチームの仕組みとして管理することです。

Bridge UPの「商談化プロセス診断」では、リードの獲得から商談化までの流れを確認し、引き渡しのどこで止まっているのかを洗い出します。「リードを渡しても、営業が動いてくれない」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

代表 鈴木 華那

この記事を書いた人

鈴木 華那Bridge UP 代表

BtoBの営業・マーケティングに20年以上従事。営業職としてキャリアをスタートし、マーケティング部門の立ち上げなどを経験。現在は「営業の現場を知るマーケター」として、少人数のBtoB企業でも商談が生まれ続ける仕組みづくりと内製化を支援しています。

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